「感応」的転回

TypeEpochYear2024MemberHaruma Kikuchi, Shotaro Yagi

プロジェクトをいかに「自律的」に運営できるか、その構造や条件を問うことには大きな意味がある。というのも、多くのプロジェクトの方法論はいまだにどのようにマネジメント(他律)するかに終始しているからだ。Project Theory Probeの創刊当初は、まさにそうした問題にオートポイエーシス理論や、ハッカー文化などに焦点を当てながら取り組んでいた。

しかし、「自律か他律か」という二項で語ることには限界があり、窮屈さを生み出してしまう。なぜならその問いは、存在を孤立させ、世界から切り離してしまうからだ。Project Theory Probe の13号以降は、Season 2と題して、そうした前提を脱したより関係的な応答のあり方へと、思考を転じはじめている。

この転回は、物事を存在からではなくその背景、具体的には関係性や差異から捉える試みとして、フェミニスト理論に通じるところがある。当時からJect/Spectといった関係性に関する動詞に着目した議論が行われていたことも踏まえて、この展開を「応答的転回(responsive turn)」と呼んでみたい。これは、自律や他律という二項対立を超えて、どのように関係性から両者を捉え直せるかという試みでもある。そこでは、閉じたシステムではなく、現れた兆候に応答する中で形づくられていく関係性が主題となる。システムや言語から一転して、モノ(material)、感覚(affect)、応答(response)、区別(distinction)といったものが重要な意味を帯びてくる。ある意味で、非人間中心的(non-anthropocentric)な立場でもあると言えるだろう。

実際、Project Theory Probe の Season 2では、「もつれ(involution)」や「共棲(symbiosis)」といった語であったり、関係(response-ability)、回折(diffraction)、中動態(middle voice)という概念、そして「私」の捉え直しなどが行われている。既知と未知、自己と他者、自然と社会といった境界を越えて、関係の編み直しを促すこの試みはまだ続いているこの転回は、Project Theory Probe が知識の体系化を目指すのではなく、「認知の構成そのもの」を問う場であるという原点を強く照らし出しているとも言えるだろう。